腸内細菌Collinsella属がCOVID-19の感染と重症化を予防する可能性があることを、名古屋大学の研究グループが明らかにした。

 新型コロナウイルスによるCOVID-19感染症は、世界中で猛威を振るっているが、その死亡率は欧米で特に高い傾向にある。反対にアジアでは欧米に比して死亡率が低く、この違いを決めるファクターXの候補には、遺伝子配列、過去の別のウイルスへの暴露歴、生活習慣の違いなど様々なものが挙げられてきた。今回、本グループでは、「腸内細菌叢」の違いの可能性もあると考え、日本を含む10カ国953人の健常者の腸内細菌データを用いてCOVID-19死亡率との関連を解析した。

 まず、腸内細菌叢を用いて各国のCOVID-19死亡率を予測する機械学習モデルを作成したところ、腸内細菌Collinsella属の比率が低いほど死亡率は高くなることがわかった。

 次に、教師なしクラスター解析を行うと、953人のデータは5つの腸内細菌叢型(エンテロタイプ)に分類された。アジアではエンテロタイプ1、欧米ではエンテロタイプ4、5の割合が多く、COVID-19死亡率はエンテロタイプ1から5にいくにしたがって増えた。一方、Collinsella属はエンテロタイプ1から5にいくにしたがって減少していた。

 Collinsella属が腸内で産生するウルソデオキシコール酸は、新型コロナウイルスの感染受容体への結合を防ぐこと、炎症誘発性サイトカインを抑制すること、抗酸化・抗アポトーシス作用を持つこと、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)では肺胞液クリアランスを上昇させることがわかっている。以上から、ウルソデオキシコール酸が新型コロナウイルス感染を防ぎ、COVID-19の重症化を抑制(ARDSを改善)する効果を持つことで、Collinsella属がCOVID-19の感染・重症化の予防に関与する可能性が示唆された。

 今後さらなる解明が進めば、ウルソデオキシコール酸をCOVID-19の感染・重症化予防薬として活用できることも期待されるとしている。

論文情報:【PLOS ONE】Intestinal Collinsella may mitigate infection and exacerbation of COVID-19 by producing ursodeoxycholate

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