東京工業大学学術国際情報センターの青木尊之教授と理化学研究所(理研) 計算科学研究機構 プログラム構成モデル研究チームの丸山直也チームリーダー、モハメド・ワヒブ特別研究員の共同研究チームは11月18日、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(高性能計算技術)に関する世界最高の国際会議であるSC16で最優秀論文賞を受賞したと発表した。
コンピュータを使ったシミュレーションは社会において幅広く利用されている。特にスーパーコンピュータなどの大規模なコンピュータを使うことで、より高精度・高精細なシミュレーションを高速に行うことが可能になる。一方でコンピュータの性能の向上スピードは次第に鈍化しつつあり、今後、さらにシミュレーションの精度や速度を向上させるためには、シミュレーション手法そのものの改善がこれまで以上に重要になるとされている。
適合格子細分化法はシミュレーションにおいて頻繁に用いられる手法の一つである格子法の一種で、通常の格子法に比べて必要な計算およびメモリ使用量を大幅に削減することができるという。しかし、実際に適合格子細分化法を用いるには多くの課題がある。このため、適合格子細分化法は原理的に有望な手法であるにも関わらず実際の利用は通常の格子法に比べて限定的なものになっていた。
今回、共同研究チームは、適合格子細分化法における問題を解決する新しいソフトウェア技術を開発し、大規模なスーパーコンピュータ上で簡単に適合格子細分化法を利用できる環境を実現した。開発したソフトウェア技術をスパコン上で用いたところ、自動的に1,000台規模の多数のGPUを同時に用いた高速かつ大規模なシミュレーションを行うことに成功した。今回のSC16ではこの点が高く評価され、最優秀論文賞を受賞した。
共同研究チームは、引き続き開発した手法の改善・改良を続けると同時に適合格子細分化法に限らず、さまざまな手法で将来のスーパーコンピュータにおけるシミュレーションソフトウェアの開発コストを削減するソフトウェア技術を研究開発していく予定。