放送大学千葉学習センターの学生団体「古文書を読む会」が、同会顧問の岩淵令治学習院女子大学教授の指導の下、江戸時代天保年間の古文書「国枝外右馬江戸詰中日記」の全文翻訳を成し遂げた。この「日記」については、概要を紹介されたことはあったが、全文翻訳は初。
「古文書を読む会」は、1995年に放送大学千葉学習センターの面接授業科目「近世文献購読」の受講者13名が、当時の担当教員であった岩淵氏のもと古文書解読を定期的に行うサークルとして発足した。以降8点もの古文書解読を行い、今回の「日記」は2007年4月から読み始め2015年に読了した。
「国枝外右馬江戸詰中日記」は、豊後国(大分県)臼杵藩の藩士であった国枝外右馬が、参勤交代で江戸勤番中に国元の妻子へ宛て認めたもの。職務・生活・文化交流等に至るまで記述が詳細・豊富で挿図約140点も伴っており、日本近世史研究にとって価値の高い史料と見られている。
解読された内容は2021年3月「勤番武士の江戸滞在記 ― 国枝外右馬江戸詰中日記」(勉誠出版)として書籍化された。あとがきには同会の24名が翻刻担当者として名を連ねている。
今回の成果は、放送大学が通信制でありながら全国57のキャンパスを拠点に、教員と学生、学生同士の交流、サークル活動が活発に行われていること、学生が長期間在学できる制度を活用して、多くの学生が高いレベルと意識で学び続けていることなど、放送大学ならではの学生気質が結実したものと考えられる。
参考:【放送大学】放送大学の学生サークルが、古文書「全文翻刻」の偉業!武士の江戸滞在日記を解読 ~面接授業をきっかけに~(PDF)