日本学士院は、2017年3月13日開催の第1107回総会において、2017年度日本学士院賞に9件10名を決定した。
日本学士院は、教育・学術の進歩発展を図るため、1879年に創設された東京学士会院をその前身とする、文部科学省に設置された学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関。日本学士院による授賞制度は1910年に創設され、学術上特にすぐれた論文、著書その他の研究業績に対して授賞を行っている。
過去の受賞者には、木村栄、高峰譲吉、野口英世、佐佐木信綱、金田一京助博士や、後にノーベル賞を受賞した湯川秀樹、朝永振一郎、福井謙一、江崎玲於奈、小柴昌俊、野依良治、鈴木章、益川敏英、小林誠、山中伸弥、赤﨑勇、大村智、梶田隆章博士がいる。
今回、ただ一人、日本学士院賞と恩賜賞をダブル受賞した東北大学名誉教授 長谷川昭氏は、典型的なプレートの沈み込み帯である東北日本に高感度・高精度の地震観測網を構築するなど、沈み込み帯の地殻・マントル構造と地震活動を世界のどこよりも高い解像度と精度でもって明らかにしてきた人物。これまで、海洋プレートのマントル中に沈み込んだ「スラブ」内の二重深発地震面の発見に始まり、内陸地震・プレート境界地震が低応力下で発生する証拠の提出など、長谷川氏が見出した現象が、その後の検証によって世界の沈み込み帯に共通する現象であることが確認された例は数多くある。さらに、地震・火山現象と島弧地殻・マントル構造との関連を「プレートの沈み込みに伴って移動する水」をキーワードにして理解する途を開くなど、この分野の重要課題の解明に大きく貢献したことが評価された。
他の受賞者は以下のとおり。
・城西大学現代政策学部准教授 奈良澤 由美氏
・京都大学東南アジア地域研究研究所教授 清水 展氏
・高エネルギー加速器研究機構名誉教授 髙﨑 史彦氏
・東京大学生産技術研究所教授 荒川 泰彦氏
・東北大学名誉教授、帝京大学客員教授 横堀 壽光氏
・東京大学大学院農学生命科学研究科教授 難波 成任氏
・神戸大学大学院医学研究科教授 戸田 達史氏
・東京都健康長寿医療センター研究所副所長 遠藤 玉夫氏
・国立循環器病研究センター名誉総長 北村 惣一郎氏