音楽を聴くことで、安心・リラックスしたりして、自覚的な疲労感が軽減されることがある。しかし、疲労感と実際の疲労度は一致しないことも多く、主観的な気分変化と科学的・客観的な疲労度の関係性は不明確であった。そこで、大阪市立大学と理化学研究所の共同研究グループは、疲労の客観的な指標となる循環器系自律神経機能指標(心拍変動)と主観的気分の変化を同時に計測し、その関係性の解析を試みた。
まず、主観的気分データの解析結果では、ピアノ、バイオリン、自然音源などから構成される環境音楽の聴取により、気分が「癒し」「眠気」「安心・リラックス感」の方向に大きく動くことがわかった。さらに、聴取前後での自律神経機能の変化と主観的な気分変化との相関を調べたところ、「癒し」や「安心・リラックス」への気分変化に対しては心拍数が減少 すること、「爽快」への気分変化に対しては心拍変動の低周波数成分(LF)と高周波数成分(HF)の比が 減少することがわかった。
この結果により、主観的な気分データから、個人の自律神経機能の変化パターンが予測可能であることが示唆された。
日常的な疲労の蓄積は、自律神経機能バランスの悪化を介してさまざまな疾病のリスク要因になることが報告されている。今回の研究をもとに、個人個人の自律神経機能に与える音楽の効果を高精度で予測する技術の開発や、自律神経機能バランスを適切に調節するような楽曲制作・選曲がデザイン可能となることが期待される。