近畿大学水産研究所新宮実験場の稻野俊直准教授は大豆イソフラボンを用いてチョウザメを全メス化することに日本で初めて成功した。実用化できればチョウザメから採取するキャビアの量産化に大きな力となりそうだ。
近畿大学によると、チョウザメはオスとメスが1対1の割合で生まれることから、チョウザメの卵であるキャビアの生産効率を上げるには、メスの単性養殖を進める必要がある。そこで、稻野准教授は2021年から和歌山県新宮市の新宮実験場で、東ヨーロッパに生息するチョウザメの仲間・コチョウザメのふ化後2カ月の稚魚に大豆イソフラボンの一種であるゲニステインを含む配合飼料を180日間与えて飼育した。
ゲニステイン含有量が1グラム中1,000マイクログラムの飼料を与えたグループから8尾のサンプルを抽出して調べたところ、8尾とも卵巣を持っていた。遺伝的にはオスであるものの、卵巣を持つ個体は、ゲニステイン含有量が1グラム中10マイクログラム、100マイクログラムのグループに見当たらなかった。しかし、1グラム中1,000マイクログラムのグループでは、サンプルの5尾すべてがメス化していた。
大豆イソフラボンは動物の体内で女性ホルモンと同様の作用をする。稻野准教授は配合飼料に大豆イソフラボンを加えるだけでメス化できることが分かり、キャビアの量産化に期待している。