大阪大学のグループは、絶食により脂肪組織のオートファジー(細胞内の不要な構造物の分解機構)が活性化することで、肝臓での脂肪蓄積とケトン体産生が誘導されることを明らかにした。同グループによる以前の研究で、老化した脂肪組織でもオートファジーが過剰となり脂肪肝を引き起こすことが判明していることから、今回、絶食と老化で共通するしくみが明らかになったといえる。
まず、本研究では、絶食時にマウスの脂肪組織でオートファジー抑制因子が不活化していることなどを見出し、絶食がオートファジーを誘導することを発見した。また、オートファジーにより抑制因子Rubiconが分解されることで、さらにオートファジーが促進され、脂肪蓄積に関わるタンパク質も分解されることがわかった。これにより、脂肪細胞の脂肪貯蔵が妨げられ、放出された脂肪は肝臓に移行して蓄積していく(脂肪肝)。
個体が飢餓にさらされると、脂肪組織が減少し、代わりに肝臓に脂肪が取り込まれて緊急時の栄養としてのケトン体産生に利用されることは以前から知られていたが、この背景にあるメカニズムが初めて突き止められた。一方、老化した脂肪細胞でオートファジー活性が増加し、脂肪肝の一因となる現象が、本来は絶食時に必要なケトン体産生のために存在するしくみであることも同時に明らかとなった。すなわち、脂肪細胞の老化は、絶食時のメカニズムを通常時にまで生じさせてしまう状態である可能性を示唆する。
なぜ老化により絶食時と同様の機構が働いてしまうのか?今回の研究を端緒として、この謎が明らかとなれば、脂肪細胞老化や老化に伴う生活習慣病の病態理解が進むことが期待される。