しじみを煮込むとスープが白濁するが、なぜ白くなるのか、これまで明らかとされていなかった。しじみ産地として知られる宍道湖を有する島根県で、白濁の原因物質がタンパク質のトロポミオシンであることが解明された。島根大学の研究グループが、しじみ汁を対象にタンパク質を分離して検出するなどの手法を用いて突き止めた。

 研究では、まず白濁の原因物質が比較的大きい(100kDa以上)ことを見出した。大きな高分子といえば、タンパク質である可能性が高いが、しじみ汁の中の白濁物質は、タンパク質の特徴である「熱を加えると変性して、沈殿したり灰汁となる」や「280nmの紫外線を吸収する」に当てはまらなかった。

 そこで、SDS-PAGE(ポリアクリルアミド電気泳動)の実験でしじみ汁からタンパク質を分離し、さらにMALDI-TOFMS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)による分析を行った結果、このタンパク質がトロポミオシンであることが突き止められた。

 牛乳の白濁はカゼインというタンパク質がカルシウムを結合していることが関係しており、豚骨スープの白濁にはタンパク質に加えて脂質も関与している。しじみのトロポミオシンでも調べてみたが、カルシウムなどのイオンや脂質は無関係だった。
他方、はまぐり、ホタテ、牡蠣などしじみ以外の貝も煮込むと白濁することがわかり、原因物質はいずれもトロポミオシンだった。

 トロポミオシンが熱変性と紫外線吸収の特徴を満たさなかったことについては、一般に熱に弱いタンパク質の中でもトロポミオシンは耐熱性を持っていること、280nmの波長を吸収するトリプトファンと呼ばれるアミノ酸がトロポミオシンには含まれていないことが明らかとなった。

 トロポミオシン自体に美味しい味はなく、しじみ汁の美味しさには関与していないと考えられるが、“美味しそう”に見せるために白濁したスープを作る上で、トロポミオシンは利用できる可能性があるとしている。

論文情報:【Scientific Reports】Tropomyosin micelles are the major components contributing to the white colour of boiled shellfish soups

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