筑波大学の研究グループは、大学トップレベルのサッカー選手と一般の大学生サッカー選手の比較研究を行い、大学トップレベルのサッカー選手は、状況判断の場面において初期視覚情報処理、刺激評価、最終的な運動反応出力いずれも短時間で実行できることを明らかにした。
本研究グループはこれまでに、サッカー選手はサッカー経験のない大学生と比較して、選択反応課題の反応時間が有意に短いことを明らかにしてきた。しかし、その間に介在する意思決定に関連した脳内の情報処理の違いについては不明のままだった。
そこで本研究では、全日本大学サッカー選手権大会で優勝経験のある大学生サッカー選手13名(High performance群、以下H群)と、これまでに全国レベルでの競技経験や都道府県、あるいは地域選抜大会での経験を有していない大学生サッカー選手13名(Low performance群、以下L群)を対象に、実際のプレー状況(4対2ボールポゼッションのパス選択場面)を想定した実験課題実施中の脳活動の計測を行った。
その結果、H群はL群と比較して課題正答率が高く、筋電図反応時間が短かった。すなわち、H群はパス選択を行う場面において、L群よりも正確かつ早い運動・反応の出力を実施できると考えられた。また、事象関連電位の計測結果から、H群はL群よりも視覚情報処理を迅速に行うこと、さらに視覚刺激に対する評価の処理も早いことがわかった。
本研究により、競技力が高いサッカー選手における状況判断時の早さに関する情報処理メカニズムの一部が示された。今後は、情報処理機能の向上を目的としたトレーニングの評価法や、選手の知覚・認知的側面の評価への適応が期待されるという。
論文情報:【体力科学】競技力が高いサッカー選手の状況判断時における脳内情報処理過程 −事象関連電位と筋電図反応時間を指標として−