高知大学の佐野有司・海洋コア総合研究センター長と富山大学の鹿児島渉悟特命助教らの国際共同研究グループは、カルデラ火山と成層火山の違いをヘリウム同位体により世界で初めて示した。

 日本列島には地表に多数の火山が存在し、形状からカルデラ火山と成層火山に分類される。カルデラ火山は大噴火によりマグマが大量に噴出し、直下のマグマだまりが空隙になり、そこに山体が崩落して箱根火山のようなクレーター形状となる。一方、成層火山は火口から噴出した溶岩や火山灰が周囲に堆積し、富士山のような円錐形となる。この山体形状の違いが地下のマグマだまりや温泉・熱水系の地球化学的進化に与える影響は不明だった。

 今回、九州中央部の典型的なカルデラ火山の阿蘇山と複合的な成層火山の雲仙岳を対象に、両火山周囲の温泉・鉱泉・地下水のヘリウム同位体比を調査。その結果、両火山周囲の温泉では火口近くはマグマの影響で同位体比が高く、遠ざかるにつれて地殻の影響で低下していた。

 また、この結果を水理学モデルで解析すると、阿蘇山のマグマは雲仙岳よりも古いと判明した。これは、地震波トモグラフィーの解析により、上部マントルからの新しいマグマの供給がないことと整合する。また、火山から少し離れた温泉・鉱泉への影響は阿蘇山が雲仙岳より大きく、カルデラ火山の方が発達した大きな温泉・熱水系を持つことを示す。

 今回の研究により、カルデラ火山の阿蘇山は成層火山の雲仙岳よりも古いマグマと発達した温泉・熱水系を特徴とする可能性が示された。今後、データの蓄積により将来破局的なカルデラ噴火を起こす火山の特定に貢献する可能性があるとしている。

論文情報:【Communications Earth & Environment】Older magma at Aso caldera than at Unzen stratovolcano in south west Japan asrecorded through helium isotopes

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