倉敷芸術科学大学は、岡山県浅口市の円珠院が所蔵する「人魚のミイラ」を、倉敷市立自然史博物館、岡山民俗学会理事木下浩氏と合同で、科学的に分析するプロジェクトを実施。今回、その最終報告結果を発表した。
円珠院の「人魚のミイラ」は、『人魚干物』と書かれた書付と共にきわめて良好な状態で保管されており、体長は約30cm、歯や爪もあり、下半身にはうろこもみられる。研究グループは、2022年2月2日からX線CT撮影、電子顕微鏡観察、DNA分析、放射性炭素年代測定などにより調査を行い、以下のような報告がなされた。
まず、上半身には前方を向く眼窩(がんか)や頭髪、眉、耳、鼻、平爪をもつ5本指の腕があり、頭部と眼窩の上に体毛がある。歯はやや曲がった円錐形で肉食性の魚類のもの。下半身には背・腹・臀・尾に各ヒレがあり、ウロコに覆われた魚体からなる。体表には木炭粉と砂を混ぜた膠(にかわ)様のものが塗られている。
また、上顎・下顎以外の主要な骨格がなく、魚体部にニベ科魚類の特徴を認めた。頭部を含む上半身はサル様の形態だが、造形されたものだった。体内には複数種類の布・紙・綿などが使われ、頭部もほとんどは綿からなり、部分的に漆喰か石膏様の物質で整形してあった。上半身の体表は薄い紙を積層して整えられ、フグの表皮と動物の毛を接着してある。首の内部、背ビレには針があった。
放射性年代測定により制作年代は1800年代後半の可能性が高い。動物の剥製製作用の薬品は不使用。DNAは検出できなかった。さらに、書付からは円珠院の人魚に直接繋がる情報は得られておらず、書付に記載されている人名などについても確証のある情報は得られなかった。