中央教育審議会の教育振興基本計画部会が日本私立大学連盟に対し、次期教育振興基本計画策定に向けた審議経過に対するヒアリングを行い、私大連常務理事の前田裕関西大学学長が意見陳述した。

 私大連によると、前田常務は幸福で健康であると同時に、身体的だけでなく、精神的、社会的に満たされている状態を指す「ウェルビーイング」について、「もう少し丁寧に説明しないと障害を持つ人への合理的配慮などの点で誤解を招きかねない」と指摘し、誰一人取り残さない共生社会実現の方策をさらに具体的に検討するよう求めた。

 サイバー空間と現実空間を高度に融合させるソサエティ5.0に対しては、「言及個所が少なく、より詳しい定義が必要」との認識を示した。大学教育の質保証については、「質保証の方法論や指標などが大学教育の画一化を招き、多様化をそぐ形になる恐れがある」と指摘し、部会で十分な議論を進めるよう要望した。

 グローバル人材の育成では、「為替レートの不安定化が留学の促進に深刻なダメージを与えている」として、学生の支援についてより具体的な言及を求めた。大学院教育では、「博士課程進学率が低いという既知の事実が再確認されているだけだ」と批判し、「物足りなさを感じる」と指摘した。

 中教審教育振興基本計画部会はヒアリング結果を今後の審議に生かすとしている。

参考:【日本私立大学連盟】中央教育審議会「教育振興基本計画部会」へのヒアリング対応

大学ジャーナルオンライン編集部

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