近畿大学薬学部の川畑篤史教授らの研究グループは、ビールの原料の1つで、苦味や香りづけなどに使用されるホップの成分が、リウマチの痛みや神経損傷による痛み、また過敏性腸症候群患者に見られる腹痛など、幅広い痛みの治療に応用できることを発見した。この成分は、モルヒネをはじめとする麻薬性鎮痛剤が効かない神経障害性疼痛(糖尿病の合併症、ヘルペス後神経痛、抗がん剤の副作用など)にも有効である可能性が高く、今後の臨床応用に大きな期待がされるという。
糖尿病患者や抗がん剤で治療中の患者によく見られる手足の痺れや痛み(神経障害性疼痛)、過敏性腸症候群患者に見られる腹痛など、麻薬性鎮痛剤が効かない(使用できない)痛みに対する有効な治療薬の開発が望まれている。
こうした中、川畑教授らは、生薬の一種である苦参から、知覚神経に発現する「Cav3.2 T型カルシウムチャネル」を阻害する「ソホラフラバノンG」の同定に成功。そこから、類似構造をもつ天然物質として、ホップの成分である「6-プレニルナリンゲニン」にたどり着き、「6-プレニルナリンゲニン」と関連化合物が痛みの原因分子であるCav3.2を最も強く阻害することを発見した。また、マウスを用いた実験を通じて、実際にこの化合物が神経障害による足の痛みや結腸過敏による腹痛を抑制することを証明した。
一方、本成分による鎮静作用や心血管系への副作用はないことを確認済みで、今後ヒトへの応用が期待できるとしている。