千葉大学とフロンティア医工学センターの研究チームは、住友ファーマ株式会社と共同で視線トレーニング装置を開発し、社交不安症に対する臨床研究を行った結果、練習の前後で、人前での不安(社交不安)を軽減する効果があることを確認した。
社交不安症は、注目を浴びる発表やグループ活動への参加などの社交場面に対する著しい恐怖や不安が毎日続くために、日常生活に支障が起こる精神疾患だ。研究グループは2016年に、抗うつ薬で改善しない社交不安症の患者への認知行動療法の有効性を明らかにし、社交不安症の認知行動療法の治療者用マニュアルを公表した。しかし、認知行動療法を提供できる医療者の不足や薬物療法による副作用のため、新しい安全な治療法を必要としていた。
研究チームは社交不安症の患者が対人場面でアイコンタクトを避ける問題に着目。視線トレーニング・ソフトウェア「アイ・コミュニケーション・トレーナー(ECOM)」とメガネ型視線計測装置を組み合わせた視線トレーニング装置を開発し、社交不安症の患者23名(平均年齢29.8歳、男性9名、女性14名)に2020年から臨床研究を開始した。
その結果、社交不安症状がトレーニング前に比べて、統計的に有意に減少。試験条件は異なるものの、従来報告された認知行動療法の効果量や薬物療法の効果量と同じレベルの効果量が示された。また、軽症のドライアイ以外の有害事象は報告されず、安全に実施できた。
ECOMによる視線トレーニングが社交不安症の新しい治療法となり得るとし、今後、大規模なランダム化比較試験を行うことで、ECOMによる視線トレーニングを社交不安症の新治療法として確立していくことが期待されるとしている。