明治大学の原ひろみ教授とニューヨーク市立大学ヌリア・ロドリゲス=プラナス教授は、「技術・家庭」の男女共修化が、成人して30歳代後半になったときの夫婦の家計内での役割分担に影響を与えたことを明らかにした。
日本は男女の賃金格差が大きい。要因として、子育てによる労働市場での不利益や「男性は外で働き、女性は家庭を守るべき」など伝統的な性別役割分担に関する意識の影響が注目されている。
一方、中学校で学ぶ「技術・家庭」は、技術分野と家庭科分野から成る科目で、1989年度まで男女別学だった。しかし、新学習指導要領への改訂によって1990年度から男女共修となった(2016年時点で40歳以上が別学、39歳以下が共修)。
研究チームは、「回帰不連続デザイン(RDデザイン)」という政策介入の「因果効果」を識別できる分析フレームワークを適用し、男女共修化が夫婦役割分担へ与えた影響を分析した。
その結果、男女共修化により、成人した男性(夫)の週末の家事関連時間が長くなり、一方、女性(妻)は非正規社員で働く人の割合が減り、正社員で働く人の割合が増えたことが示された。さらに、伝統的な性別役割分担意識に賛成する女性(妻)の割合が減ることも示された。
共修化により家事・育児は男女両方の役割であると男女ともに受け止めるようになり、結果として、男性は家事関連時間を増やし、女性は積極的に労働市場で働くようになったと考えられるという。
今回の研究は、性別で社会的役割が異なると生徒に認知させる教育や活動等が学校教育で行われると、その後の人生での意思決定・行動選択に影響することを示唆している。学校教育でのジェンダー平等推進の重要性を示すものとしている。