富山大学学術研究部医学系の山田正明准教授、関根道和教授らが医学や薬学、看護学など医療系の大学生を対象に紙とデジタルの学習効果を尋ねる調査をしたところ、「記憶」「集中」を必要とする深い学びには紙を選択する声が強いことが分かった。
コロナ禍で授業形態が大きくデジタル化し、富山大学でも2020年度からデジタル機器を用いたICT授業を行っている。今回、紙学習とデジタル学習での学習効果について、「わかりやすさ」「記憶」「集中」の3つの指標を3段階で評価した。また、また「眼の疲労」についても、紙で悪い、同等、デジタルで悪いという3段階で評価した。
調査は富山大学医学科、薬学部の1~4年生、看護学科の1~3年生を対象に実施、医学科191人、薬学部80人、看護学科73人の計344人の回答を集計した。
それによると、学習内容の分かりやすさは、「紙が良い」としたのが32.0%、デジタルが35.2%、同等が32.8%とほぼ3分され、大きな差がなかった。記憶しやすさは71.2%、集中しやすさは74.7%が紙を挙げ、デジタルの記憶6.1%、集中6.7%に大差をつけた。
眼の疲労に関しては「デジタルが悪い」とする回答が84.6%に上っている。
デジタル機器を用いた普段の学習では、学習時間が長いほどデジタルが良いと答えた学生が増えた一方、記憶や集中に関しては、デジタル機器で長時間学習する学生の10%以下しか「デジタルが良い」と答えなかった。
山田准教授らはデジタル機器を使った教育が全国の小中学校でも導入されているが、プログラミングや情報収集の点で利点を持つ一方、記憶や集中という面で低い学習効果しか挙げられない可能性があるとして、紙とデジタル双方のメリット、デメリットを考慮した授業にする必要があると提言している。