明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明教授らは、脂質ゼロの油を生成する「Virtual Oil Generator」、脂質・糖類ゼロのクリームを生成する「Virtual Cream Generator」を発表した。

 宮下研究室ではこれまで、「味溶液」を複数混合して任意の味を表現する味覚メディアを開発してきた。2023年には、10の60乗(1那由他)通りの味の組み合わせが出力できる調味装置「TTTV3」を発表しており、ワインやカカオの産地や品種による味の違いの表現まで実現している。今回、この味覚メディアに「食感」の制御を加えることで、油やクリームの表現を新たに可能とした。

 「Virtual Oil Generator」は、同大学の小平乙寧さんと宮下教授が共同開発した。粘性、滑らかさ、脂質感をイヌリン(水溶性食物繊維)と低強度寒天で調整し、脂質を全く使用していないにもかかわらず油の食感を再現する。味溶液と組み合わせてTTTV3に搭載することで、5種類のブランドのオリーブオイルを表現して出力可能だという。「Virtual Oil Generator」で生成したオリーブオイルは、油の摂り過ぎを気にすることなく味わうことができ、食材のパサパサ感の軽減や、光沢感の付与にも活用できる。

 「Virtual Cream Generator」は、同大学の千田知佳さん、奥野達也さんと宮下教授が共同開発した。ゲル化や気泡をゼラチンで調整し、粘性をサイリウムで調整することによって、クリームの食感や口どけの良さを再現する。甘味の調整には糖類ではない甘味料を用いるため、脂質も糖類もゼロのカスタードクリームやホイップクリームが作れる。卵や牛乳は不使用なので、アレルギーのある方でも安心してクリームを味わえる。

 本研究は、脂質や糖類の摂取による健康被害を気にすることなく、好きなだけ油やクリームを味わえるという、食品の常識を覆す成果である。

参考:【明治大学】「脂質ゼロの油」「脂質・糖類ゼロのクリーム」を生成する研究を明治大学 総合数理学部 宮下芳明研究室が発表

大学ジャーナルオンライン編集部

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