エコチル調査甲信ユニットセンターの信州大学の研究チームは、エコチル調査のデータを用い、妊娠中の母親の血中PFAS濃度が高いと子どもの染色体異常の発生が多い傾向を認めたと発表。ただし、PFASと染色体異常の確かな関連性については、今後さらに研究が必要性としている。
環境省が2010年度から開始した「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は、胎児期から小児期の化学物質へのばく露が子どもの健康に与える影響を解明するための大規模な長期的調査だ。国立環境研究所にコアセンターを、国立成育医療研究センターにメディカルサポートセンターを置き、全国15の大学等に調査拠点のユニットセンターを設置している。
研究チームは今回、エコチル調査対象の妊婦約10万人のうち、血中PFAS濃度を調査できた約25,000のデータを使用した。PFASは有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称。今回、7種類(PFOA、PFNA、PFDA、PFUnA、PFTrDA、PFHxS、PFOS)のPFASを分析した。
その結果、対象者のうち子ども44人に染色体異常を認めた。染色体異常への影響の大きさはPFOS、PFNA、PFUnA、PFOAの順だった。ただし、すぐにPFASと染色体異常の関連性は結論づけられないという。エコチル調査対象の妊娠約25,000人のうち染色体異常が44例しかなく、また、染色体異常のほとんどは妊娠12週までに流産になるとされるがエコチル調査では12週以前に流産した妊婦の情報がないからだ。
PFASと染色体異常との関連性について確かな結果を得るには、生物学的なメカニズムに関する実験研究や、父親の精子に着目したPFASと染色体異常の研究、妊娠前からの追跡調査等が必要だが、今回の研究成果はその必要性を示したとされる。