東京科学大学の磯部 敏宏准教授らの研究チームは、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を環境基準以下まで除去できるシステムの開発に成功した。
PFASは界面活性剤、半導体用反射防止剤、撥水剤、ポリマー加工助剤など、商業・工業用製品に広く使用されてきた。しかし、自然環境で分解しにくく残留性が高い。人体の健康や生態系への影響も懸念され国内外で製造・使用等が規制されつつある。現在PFAS除去法の開発が進められているが問題もあり、活性炭による吸着除去は活性炭からPFASが環境中へ溶出する二次災害が報告され、膜分離法はランニングコストが高い。
研究グループは膜蒸留法に着目。熱や塩害に強いと言われるカーボン製の膜蒸留用分離膜(カーボン膜)の開発に取り組んだ。開発したカーボン膜は、多孔性、撥水性を兼ね備え、高い耐熱性を持ち、膜蒸留に好適な分離膜と判明。このカーボン膜に擬似汚染水を接触させ、約80℃で加熱したところ、蒸発した水の膜透過を確認できた。
分析では、水質管理目標値(50ng/L)やアメリカ環境基準(4ng/L)を下回る測定限界(約3ng/L)以下まで浄化することに成功。また、カーボン膜の作製条件により、細孔径の制御が可能で、細孔径と単位時間あたりの処理量に相関を認めた。今回はグルコース原料のカーボン膜を用いたが、市販の食用砂糖でもカーボン膜の作製が可能だ。
今後は、実際の土壌中汚染水の浄化に取り組み、単位時間あたりの水処理量増加技術を開発する予定という。将来的には太陽光を利用した加熱方式に切り替え、ヒーターや真空ポンプを使用しない完全な電力フリーのシステムへ展開を目指すとしている。