東京科学大学の研究チームは、言語表現に対応した香りを自動創作する香り生成AIを開発した。

 新しい香りの創作(調香)は、訓練を受けた専門家であっても意図した香りを得るには多大な労力と時間を要する作業である。そこで本研究チームは、生成系AIの一つである拡散モデルを使用した香りの創作手法を開発した。

 拡散モデルにWoody、Spicy、Sweet、Herbal、Green、Fresh、Warm、Floralなど57種類の香り記述子に関連する166種類の液体香料(精油)の情報を入力し、香り記述子に対応するマススペクトルが得られるように学習させた。そのマススペクトルを香り成分(ここでは各精油)に分解し、得られた構成比に従って精油を調合することにより、香り記述子に対応した香りを生成することができるという。

 調香精度の検討として、はじめにWoodyとSpicy、SweetとWarmのように、二通りの香り記述子に対応する香りを生成し、人が嗅ぎ比べる実験を行った。被験者にそれぞれの言葉のイメージにふさわしい香りを選択してもらったところ、高い正答率が得られ、意図した香り記述子に対応する香りが生成されていることが確認できた。

 さらに、精油の香り記述子にもう一つ別の香り記述子を加えた香りを生成し、もとの精油と嗅ぎ比べて、どちらが加えた香り記述子にふさわしいかを選択してもらう実験でも、ほぼ意図したように生成した香りが選択されることがわかった。

 新しい香りを創作する新技術であるこの手法は、これまで大変な時間と労力がかかっていた調香の迅速化により、香り製品開発の効率向上に貢献することが期待される。今後は、さらに複雑な香りの要求にも応えるAIや、精油混合比の提案のみならずリアルタイムに香りを生成する技術の開発も予定しているという。

論文情報:【IEEE Access】Generative Diffusion Network for Creating Scents

東京科学大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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