東京科学大学大学院の松山祐輔准教授、相田潤教授らの研究チームは、オーストラリアのクイーンズランド大学との共同研究により、オーストラリアのデータを分析した結果、「水道水フロリデーション」が多くの子どものむし歯を予防し、特に社会経済的に不利な背景を持つ子どもに予防効果が大きいことを明らかにした。
う蝕(むし歯)は、世界で最も多く見られる病気のひとつで、社会経済的に不利な背景を持つ人ほど罹患しやすいとされる。一方、水道水フロリデーションは、安全にう蝕予防ができる濃度(0.7~1.0 ppm程度)に水道水中のフッ化物イオン濃度を調整する施策で、多くの国が実施(日本は未実施)しているが、健康格差への影響は十分に明らかではない。
そこで研究グループは、オーストラリアの子どもの全国調査データ(5〜14歳1万7517人)を用い、水道水フロリデーション地域に居住していたかどうかと、う蝕の数との関係を推定、さらに個人・家庭・地域に関する46項目の情報を加味し、どのような集団で予防効果が大きいかを検討した。
その結果、水道水フロリデーション地域に居住していた子どもは、他地域の子どもより、う蝕が平均0.9歯面少ないことが分かった。予防効果にはばらつきがあったが、集団全体では効果を認めた。特にひとり親家庭で収入が低い世帯など、社会経済的に不利な背景を持つ子どもほど大きな予防効果が示された。
今回の研究成果により、水道水フロリデーションが多くの人々のう蝕を予防するだけでなく、健康格差の是正にも寄与し得る公衆衛生施策であることが示されたとしている。