国立科学博物館や福井工業大学などの国際研究チームは、動物や植物などの共通祖先(真核生物の共通祖先)は、地球の生態系を支える光合成で使われるクロロフィルを安全に食べられるように進化した生物だったことを明らかにした。研究チームには他に、海洋研究開発機構、国立環境研究所、立命館大学が参加。

 クロロフィル(葉緑素)は光合成に不可欠な色素で、他の生物に「食べられる」と活性酸素を発生し、食べた側に致命的なダメージを与える光毒性の物質でもある。食べる側にはクロロフィルを無毒化して光毒性に対抗する仕組みが不可欠だ。

 藻類は多くがクロロフィルを持つ光合成生物だが、今回、この藻類を食べる真核生物(細胞に細胞核を持つ生物)に、細胞内に取り込んだクロロフィルを活性酸素が発生しない安全な「CPE」という物質に転換する仕組みがあることを突き止めた。

 さらに、現在の地球上には、非常に多様な真核生物が存在しているが、クロロフィルを CPE に「無毒化」する仕組みはほとんど全ての系統群に共通して存在することも明らかにした。これは、現在の多様性の起源となった祖先的な真核生物の段階(10~18 億年前の原生代に存在)で、すでに「藻類を安全に食べることのできる仕組み」が確立していた証拠だ。

 約6億年前に地球の大気や海洋が酸素で満たされたとき、クロロフィルを持つ「猛毒生物」の藻類が大繁栄した。すると、それまでは藻類を食べて細々と生きていた真核生物(人類を含む現存の真核生物の共通祖先)が、クロロフィルを無毒化できないライバルたちに代わって台頭。この酸素環境下で藻類を食べることのできた真核生物の子孫が多様化し、現在のように繁栄したという。

論文情報:【The ISME Journal】Taming chlorophylls by early eukaryotes underpinned algal interactions and the diversification of the eukaryotes on the oxygenated Earth

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