菅義偉首相が日本学術会議の新会員候補者6人の任命を拒否した問題で、日本地球惑星科学連合、日本史学会連合など国内95学会は政府から理由を示されずに任命されなかったことを憂慮するとした緊急声明を発表した。
日本地球惑星科学連合によると、声明には日本数学会、日本物理学会、生物科学学会連合など理工系の主要学会が参加した。任命拒否が起きた現状を憂慮するとともに、政府と日本学術会議の対話で早期解決を図るよう求めている。
菅首相は任命拒否の理由について「広い視野に立って総合的、俯瞰(ふかん)的観点から活動を進めていただくため」と述べ、明確な説明を避けてきた。しかし、9日になって105人の推薦リストについては「見ていない」と説明した。
任命拒否の背景には軍事研究を拒絶する日本学術会議への不満があると指摘する声も出ているが、自民党は参議院内閣委員会の閉会中審査で日本学術会議の運営が閉鎖的で改革の必要性があることを主張した。
これに対し、国内の学会や大学などから学問の自由を損なうとして反発する声が相次いでいる。日本学術会議の大西隆元会長は立憲民主党など野党の合同ヒアリングで安倍政権時代にも首相官邸から人事案に難色を示されたことを明らかにした。
日本学術会議の新会員任命について、1983年に当時の中曽根康弘首相が国会で「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と答弁した。内閣府は首相が日本学術会議の推薦に従う義務はないとする内部文書を公表、内閣法制局は法解釈の変更ではないとしている。