文部科学省は、新たに創設する所得連動返還型奨学金制度の第1次まとめの内容を公表した。所得に応じた返済額を設定し、年収300万円以下の人には申請により返還猶予を検討する内容で、政府は2017年4月の入学者から導入したい考え。

 文科省によると、制度の対象となるのは大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校専門課程。所得が一定額に達するまでは定額(最低2,000円)の返還とし、一定額を超えると所得に応じた返還額とする。

 所得に対する返還額の割合は9%。この制度を利用した場合、一般的なモデルケース(初任給281万円、毎年17.9万円ベースアップ)だと、15.5年で返還が終わり、最終返還月額は2万2,100円となる。災害被災者や生活保護受給中、年収300万円以下で生活に困窮しているなどの場合は、申請により返還猶予を可能とする。

 従来の定額返還型奨学金制度は、収入がなくても一定の返済を迫られることから、卒業後に返済で苦しむ人や支払い不能となるケースが相次ぎ、文科省の有識者会議が新たな制度を検討していた。

 これに対し、日本弁護士連合会が「この制度は設計と運用次第で利用者の負担を軽減する一方、誤れば逆に利用者へ大きな負担を強いる懸念がある」との村越進会長名での声明を発表するなど、制度の不備を指摘する声も広がっている。

参考:【文部科学省】新たな所得連動返還型奨学金制度の創設について(第一次まとめ)
【日本弁護士連合会】所得連動返還型奨学金制度に対する会長声明

大学ジャーナルオンライン編集部

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