文京区では、区内4カ所の大学に日本で初めて妊産婦・乳児専用の避難所を設置した。その1つである日本女子大学では、妊産婦・乳児専用の避難所を学生参画型で運営するための準備や収容力のシミュレーションを大学事務局と共に検討している。
今回の取り組みでは、学生が卒業論文研究として避難所開設時の準備を計画し、支援者となりうる大学生のボランティア意識をアンケート調査した。まず、一般避難所に対する文京区が作成した避難所開設キットの提供を受け、その内容を応用し、日本女子大学版の妊産婦・乳児救護所開設キットを学生が開発。さらに、社会連携科目授業「地域・企業と未来を創るクリエイティブ・プロジェクト演習」において、文京区、大学事務局とともに検討を行い、学生が救護所の運営方法や支援内容の検討と避難所開設キットの開発、キットを用いた開設訓練を企画・実施した。
2020年12月に行われたZoomによるオンライン授業では、文京区防災課の担当者や大学の防災・社会連携担当事務局も参加し、2~4年の学生が運営計画についてプレゼンテーションを行った。4年生が卒論で試算した日本女子大学での収容人数は合計240名。この数字をもとに新型コロナウイルス感染症への対策も考慮した開設キットを検証してタイムラインを作成し、大地震発生時から1時間で受け入れ可能とする準備体制を構築した。計画する上で、母子を早く安心させたいという理由を優先したが、マンパワー不足の問題点があり、文京区担当者からは「定期的な訓練が必要である」と指摘を受けた。
学生からは、学生参加型の運営体制として、学生ボランティアの募集サイトを作り、広く学生に声がけする提案があった。この提案に対し、文京区担当者からは学生ボランティアについて特に運用方法が研究されていることが紹介され、大学事務局からは、学生ボランティアの実際の役割が重要であるとの意見が出された。
家政学部住居学科の平田京子教授によると、文京区では避難所開設訓練を避難所ごとに実施しており、他の自治体でも避難所開設訓練などが実施されるようになっている。しかし妊産婦・乳児救護所のような医療と連携した機能をもつ避難所開設に当たってはまだまだ計画や訓練等の実績が十分ではないという。
大学がかかわる例は2016年の熊本地震等で実際にあったが、周知が十分でなく利用者が少なかったなど課題もある。平田教授は『発生前から計画し、訓練を重ねておくことが必要で、災害発生前から学生参画型を模索する例はほとんどない。今後、社会連携授業「地域・企業と未来を創るクリエイティブ・プロジェクト演習」は2021年度前期にも開講し、避難所開設と運営のための検討を継続していく』と話している。
参考:【日本女子大学】本学学生と本学・文京区が連携して開設検討・訓練実施 文京区妊産婦・乳児救護所 運営について-学生参画型運営の実現に向けてー