東日本大震災直後からさまざまな復興支援の取り組みを行ってきた日本女子大学。その中で、家政学部は「科学的に生活をとらえる」視点から、学科の枠を越えた被災地支援と研究活動を、東日本大震災が発生した2011年直後から開始した。10年を経てコロナ禍で新たな局面を迎えた今日も、活動を継続している。
日本女子大学家政学部は、2011年3月11日東日本大震災発生後、5月には家政学部の教員が各々に被災地とつながり、支援活動を始めた。2012年からは、家政学部住居学科の定行まり子教授を中心に福島県南相馬市の「原町聖愛こども園(社会福祉法人ちいろば会)」において研究・支援活動を開始した。
児童学科の杉山哲司准教授、澤田美砂子助教(現准教授)は、外遊びができなくなった子どもたちの体力測定や運動の指導、食物学科の五関正江教授は子どもの免疫力を高める食事や食の安全の支援、被服学科の多屋淑子教授(現名誉教授)は被災地での衣服についてなど、生活に根差した科学的な研究・支援活動を行った。園庭の砂場の砂が放射能汚染で使用できなくなり、山形県の砂に入れ替えるプロジェクトでは、京都府や滋賀県にある保育園の協力を得て砂の放射線量の比較を行い、10トンもの砂の安全を科学的に立証した。
また、当時家政学部通信教育課程の学生であった菅野真由美氏の故郷では、福島第一原子力発電所から50kmのホットスポットに入ってしまった「小国(おぐに)」地区に「放射能からきれいな小国を取り戻す会」を設立。高い空間放射線地域に生活する住民による地域再生活動を行い、特に里山農作物の放射線量の測定は日本女子大学も協力。その後も三井物産などから研究費を受け、支援活動・研究調査を継続して行っている。
2020年はコロナ禍に見舞われ、支援のあり方もリモートによる情報交換が主になったが、現在、「聖愛ちいろば園(社会福祉法人ちいろば会)」とは感染症対策について情報共有するなど、コロナ対策についても支援や調査を進める準備をしている。
定行教授は、『日常生活を科学的にとらえることは、本学家政学部の特色です。本学学生たちは震災や原発問題への意識、関心も高く、学生は10年経った現在も震災、原発問題を自分たちの問題としてとらえ、ゼミでは毎年学生が卒業論文のテーマとして取り上げられています。本学学生の研究についても「聖愛ちいろば園」をはじめ現地の方々にご協力いただいています。コロナ禍による影響とその支援は、被災地の復興支援と似通った点があります。科学的なデータを現地と共有することが重要であり、その上でどのように支援を進めるかこれからも検討を継続していきます』と話している。
参考:【大学プレスセンター】「東日本大震災から10年」 日本女子大学 家政学部による科学的に日常生活をとらえた被災地復興支援 — 保育所での調査研究、ホットスポットの地域再生など福島県で活動