大阪大学の研究グループは、動物の神経および筋肉の特性を再現可能な四脚ロボットを開発することで、ネコの安定した歩行運動を生み出す反射回路の候補を見出した。

 四脚動物が効率的かつ安定して歩行するしくみの解明を目指した20世紀後半の実験研究により、いくつかの神経機構が見つかっている一方で、現在は動物愛護の観点から生きて動き回る動物のしくみを内部から調べることが困難となっている。発見された神経機構が動物の体の中でどのように統合されているのか、すなわち歩行を司る反射回路がどのように配線されているのかという構造は未だ明らかになっていない。

 そこで今回、本グループは、実際の動物を調べる代わりに動物の神経および筋肉の特性をコンピュータ上で再現して歩く四脚ロボットを開発した。このロボットを用いた歩行実験により、歩行を生み出す反射回路を探索したところ、「膝関節を伸ばす筋肉が力を受けたときに腰関節を後ろへ伸ばし、腰関節を伸ばす筋肉が力を受けたときに膝関節を伸ばす」というきわめてシンプルな構造の「腰・膝伸筋間の相互興奮性回路」を発見した。この反射回路をそれぞれの足に再現するだけで、ロボットは安定な歩行を生じ、逆に回路を切断すると歩行は不安定になった。
また、この回路を刺激すると、ネコと同様の支持脚期延長現象(脚が地面についたままになり、つぎの一歩が踏み出せなくなる現象)が現れたことから、この回路がネコの歩行を司る重要な回路であることが示唆された。

 このように、実験動物の代わりとなるロボットを用いることで、より多くの研究者が幅広い実験条件下で動物のしくみを調査できるようになり、動物が巧みに歩行するしくみの解明や、動物のように効率的かつしなやかに動き回るロボットの開発に向けて新しい知見がもたらされることが期待される。

論文情報:【Frontiers in Neurorobotics】A Reciprocal Excitatory Reflex Between Extensors Reproduces the Prolongation of Stance Phase in Walking Cats: Analysis on a Robotic Platform

大学ジャーナルオンライン編集部

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