若返り効果で注目されるニコチンアミドモノヌクレオチド(以下、NMN)を生産する乳酸菌を、静岡大学と株式会社大阪ソーダの共同研究グループが発見した。
NMNは、生後2年のマウス(ヒト年齢で約60歳)に1週間投与したところ生後6ヶ月(ヒト延齢で約20歳)の運動能力・外観を示したという若返り効果の研究報告から一躍注目され、その抗老化作用が科学的にも証明されている化合物である。以来、NMNは日々の健康維持に有用である科学的根拠をもつ食品、「ニュートラシューティカルズ」(栄養:Nutritionと医薬品:Pharmaceuticalsから作られた言葉)の一つとして、含有するサプリメントが販売されるようになったものの、NMNを工業的に効率よく生産する方法がないために、いずれも高価なものとなってしまっている。
そこで、新しい反応を触媒する微生物や酵素を自然界から見つけ出し、産業応用に結び付けるための研究に取り組んでいる本グループでは、NMNを生産する乳酸菌の探索を開始した。その結果、フルクトバシラス属の乳酸菌がNMNを生産することを発見し、さらにフルクトース(果糖)を添加すると菌体内にNMNを蓄積することも見出した。このことは、NMNのニュートラシューティカルズ効果だけでなく、乳酸菌のプロバイオティクス効果も期待できる、「NMNを含有する乳酸菌そのものの製剤化」が可能であることを意味する。
この乳酸菌を用いた現在のNMN生産量は培地1リットルあたり数mgであり、工業生産に向けては更なる生産性の向上が必要だとしているが、効率的なNMNの工業生産プロセスの構築に大きく前進する成果だといえる。
論文情報:【Scientific Reports】Nicotinamide mononucleotide production by fructophilic lactic acid bacteria