近年問題視されている「食品ロス」の一つに、学校給食における残渣(食べ残し)がある。給食残渣は児童・生徒1人あたりで年間17.2kg、日本全体では5万tと推計(環境省による平成25年度の調査結果)され、その多くが焼却処分されているために、過程で排出される二酸化炭素も地球環境を悪化させる一因だ。
この課題を解決するため、大阪府立大学のグループは、給食残渣を利用したミミズ堆肥化技術に着眼した。有機物を体内で分解して土壌の肥沃化に貢献するミミズの能力を活かして、給食残渣から堆肥の作製が可能か、大阪府教育庁の協力のもと、大阪府立藤井寺支援学校をモデル校として検証した。
実験ではシマミミズを用い、校庭に設置した堆肥作製用の装置の中で、廃棄された給食残渣や紙ゴミ(シュレッダーで裁断されたもの。水分量調節のため)を材料に堆肥を作製した。18週間後、堆肥の化学成分分析をしたところ、堆肥としての性質を示すC/N比(炭素量と窒素量の比率)は一般的な堆肥と同程度となった。一方、硝酸態窒素の他、カリウム、マグネシウムなどのミネラルは、ミミズを使用しない通常の堆肥よりも豊富に含まれることがわかった。
続いて、このミミズ堆肥を用いてコマツナの発芽試験を行ったところ、発芽の良さを示す発芽インデックスが通常の堆肥のおよそ2倍となった。さらに、堆肥中の細菌叢解析では、植物の成長促進や病害抑制機能をもつ細菌群の割合が増加していることが確認された。
以上から、これまで利用価値のなかった給食残渣を材料にミミズ堆肥が作製可能であることに加え、その堆肥は通常の堆肥よりもむしろ有用であることが実証された。
本研究は、給食残渣のリサイクルにとどまらず、様々な食品ロスの場面でミミズ堆肥を活用することで、新しい資源循環型社会の構築につながる可能性を示唆している。