東京工業大学の波多野睦子教授らの研究グループはダイヤモンドに空いた微小な孔とゲルマニウムから作られる発光体の形成に世界で初めて成功しました。生きた細胞を画像化するためのマーカーや暗号通信、高感度センサーなどへの応用が期待できます。

ダイヤモンドは炭素原子が立体的に並んだ構造をしていますが、一部に原子が抜けた欠陥が存在します。不純物としてゲルマニウム原子を含んでいるとダイヤモンドの欠陥と作用することで光を吸収する性質をもちます。そして吸収された光は再び放出されます。光を吸収することで自らも発光するのです。このように固体内部に形成された欠陥構造で光を放つものをカラーセンターと言います。ダイヤモンド自体が生体になじみやすいことや、カラーセンターの寿命が長いことから細胞を生きたまま可視化するためのマーカーなどに使えると考えられています。そのためには多数のカラーセンターの集合を形成して、強い光を放つ状態を実現する必要があります。また孤立した状態のカラーセンターを形成することができれば、暗号通信にも利用できるとされています。そして、今回の研究ではこの両方を形成することに成功したのです。ゲルマニウムを含むカラーセンターは、これまでに知られていた窒素やシリコンを含むものと比べて強い光を放つことができ、品質のばらつきも少ないという点で優れていました。

ダイヤモンドというと宝飾品としてのイメージが強いですが、科学的・工業的にも非常に重要な物質です。このように最先端の研究現場では宝石としてのダイヤモンドからは思いもよらないような技術の担い手として活躍しています。ダイヤの指輪を持っている人もちょっと見る目が変わるかもしれませんね。

出典:【東京工業大学】ゲルマニウム導入し光るダイヤを開発―バイオマーカーや量子暗号通信への応用へ期待―

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。