2022年5月13日、昭和女子大学はウクライナ出身の現代美術作家ヴィクトリア・ソロチンスキーさんによる講演会「生命を夢見て:ウクライナと共に」を開催した。チャリティー個展のため来日する機会にあわせ、日本の若者に話したいという本人の希望で実現。当日は昭和女子大学の学生・教職員やテンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)の学生、一般参加者など約150人が集まった。
ヴィクトリア・ソロチンスキーさんは、ウクライナのマリウポリで生まれた。1990年に家族とともにソ連を離れ、ニューヨーク大学で美術修士号を取得した。現在はベルリンを拠点に活動しており、多文化的背景を持つアーティスト/写真家として国際的に高い評価を受けている。ヨーロッパ、北南米、アジア23か国で75以上の展覧会を開催し、90冊以上の本を出版するなど数々のプロジェクトを手掛けてきた。
ソロチンスキーさんの曽祖父母はマリウポリで革命家として重要な役割を果たした。旧ソ連の統治下で起きた飢餓などを生き抜いて家族が歩んだ道は、ウクライナの歴史そのものだったという。芸術活動を行ううえで最も影響を受けたのは、タレント、アーティスト、俳優、舞台監督、写真家として活躍した祖父で、祖父とともに現像部屋で過ごした思い出が彼女に写真の道を選ばせた。2009年からはウクライナ・キーウ周辺の限界集落に取り残された老人たちの姿を撮影し、故郷を喪失した自らのアイデンティティと祖先から受け継いで来た記憶をテーマに、写真を用いた芸術表現を試みてきた。
講演会の後半はチャリティ個展「生命を夢見て:ウクライナと共に」に出展した作品を中心に紹介。ウクライナ侵攻の1週間前までキーウの実家に滞在していたソロチンスキーさんは侵攻前と侵攻後ののウクライナの街の様子を比較し「起きている事が信じられなくて、感情的な気持ちになる」と時折涙を見せながら話した。
チャリティー個展「生命を夢見て:ウクライナと共に」(主催:アートエイド実行委員会)は、ギャラリーTOM(東京都渋谷区松濤)で開催され、戦災に見舞われたウクライナの子供たちへの寄附金を募った。