Veterinary: Hair of the dog – testing stress levels in shelter dogs

 
イヌの体毛試料に含まれるコルチゾールのレベルを測定する方法が、動物保護施設に収容されたイヌの長期ストレスを測定する上で有効かもしれないことを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。今回の知見は、体毛の採取が、イヌの福祉を監視したり、研究したりする際の新たな有用な手段と考えられることを示唆している。

イヌは、動物保護施設などの環境下で慢性的なストレスに苦しむことがあり、それが長期的な健康問題や問題行動につながることがある。ストレス度を調べる一般的な方法は、コルチゾールというホルモンの血中濃度や尿中濃度を測定することである。しかし、これらの方法は、侵襲的な場合があり、特定の時点のストレス度しか分からず、長期的なストレスを調べることができない。

今回、Janneke van der Laanたちは、非侵襲的な方法である体毛中のコルチゾール濃度(HCC)のサンプリングが、動物保護施設に収容されたイヌの長期コルチゾール濃度の正確なバイオマーカーになるかを検討した。van der Laanたちは、2018年10月~2019年8月の間にオランダの動物保護施設に収容された52匹のイヌ(雌18匹、雄34匹)のHCCを測定した。なお、強い不安状態にあるイヌや攻撃的行動を示すイヌは、今回の研究から除外された。体毛試料の採取は、動物保護施設への収容時、収容から6週間後、新しい飼い主に引き渡されてから6週間後と6か月後に行われた。剪毛/再剪毛プロトコルが用いられ、脱毛した部分を剪毛あるいは散髪して、その後新たに生えた体毛を研究対象期間終了後に再び剪毛できるようにした。また、尿試料の採取は、動物保護施設で5回、新しい飼い主に引き渡されてから5回実施された。20匹の動物保護施設に収容されていない飼い犬(対照群)からも体毛試料が一度採取された。

動物保護施設に収容されたイヌの収容時のHCCと対照群のHCCとの間に有意差はなかった。van der Laanたちは、動物保護施設に収容されてから6週間後のHCCが、収容時のHCCより有意に高かったことを報告している。これに対して、新しい飼い主に引き渡されてから6週間後と6か月後のHCCは、収容時のHCCと比べて、有意に高くなってはいなかった。また、動物保護施設に収容されたイヌのHCCと尿中コルチゾールレベルとの間には、有意だが中等度の正の相関が見られた。これは、HCCが、イヌのコルチゾールレベル、ひいてはイヌのストレスの有効なバイオマーカーであることを示唆している。van der Laanたちは、今後のHCC研究は、さまざまなタイプの体毛を持つ広範なイヌ品種が含まれた、より大きなサンプルサイズで行う必要があると付言している。

doi:10.1038/s41598-022-09140-w
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「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

 
※この記事は「Nature Japan 注目のハイライト」から転載しています。
転載元:「獣医学:シェルターに収容されたイヌの体毛からストレス度を調べる
 

Nature Japan

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