近畿大学水産研究所の澤田好史教授(水産増養殖学)らの研究グループは、科学技術振興機構、国際協力機構の支援を受け、中米パナマでキハダマグロの稚魚の海上養殖に成功しました。資源量の減少が心配されているキハダマグロの養殖実現につながるとして、世界中から注目を集めそうです。
養殖はパナマのロスサントスにあるアチョチネス研究所で進められました。研究所内の陸上水槽で飼育しているキハダマグロの成魚から4月、約7万3,000粒の受精卵を採取。人工孵化させて平均全長12.1センチまで育てた稚魚238尾を、研究所沖合にある海上生簀に移し、26日間飼育しました。生簀で生き残った68尾は平均全長18.7センチまで成長、再び陸上の大型水槽に移して飼育を続けています。8月末現在で推定18尾が生き残り、元気に水槽を泳いでいるといいます。
マグロの仲間は世界中に8種類いて、近年は年間約190万トンが水揚げされています。そのうち、キハダマグロは約120万トンで、全体の65%を占めています。しかし、マグロの資源量は減少が進み、太平洋クロマグロが国際自然保護連合から絶滅危惧種に指定されたのをはじめ、キハダマグロも軽度懸念に分類されています。
日本はマグロ類全体の25%を胃袋に収める世界最大の消費国だけに、キハダマグロの養殖技術確立が急務となっていました。このため、クロマグロの完全養殖に成功した近大水産研究所が、クロマグロの技術を応用してキハダマグロの養殖にパナマで取り組んできました。中南米諸国は、キハダマグロの養殖技術が確立すれば、新たな特産品が誕生することになるとして、早くから研究成果に関心を示しています。