早稲田大学、東洋大学、PerkinElmer Japan合同会社などの研究グループは、世界で初めて、空気中に浮遊する小さい水滴、雲水(くもみず)の野外観測により大気中マイクロプラスチックの存在を実証し、その特徴や起源を解明。想定以上に環境・健康リスクを高めていることが明らかになった。

 大気中マイクロプラスチック(AMPs)は、上空では強い紫外線により劣化速度が速く、温室効果ガスであるメタンや二酸化炭素を放出したり、雲凝結核や氷晶核として雲形成を促進したりする可能性がある。これまで、野外観測により雨水からAMPsが検出されてきたが、雲水中のAMPsの存在は実証されていなかった。

 そこで研究グループは、自由対流圏(高度約2~2.5kmより上空の大気層)に位置する富士山頂(標高3,776m)、大気境界層に位置する富士山南東麓(標高1,300m)、丹沢大山山頂(標高1,252m)で2021年から2022年にかけて雲水44試料を採取した。

 その結果、3地点で雲水から合計70個、9種類のAMPsを検出。ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリカーボネートなど、カルボニル基などの親水基を持つAMPsが雲水中に濃縮されていた。また、本来は親水基のないポリエチレン、ポリプロピレンも紫外線劣化の進行により、カルボニル基や水酸基などの親水基を持っていた。これにより、雲凝結核や氷晶核として機能している可能性が高いことが明らかになった。

 AMPsの雲形成能が高ければ、太陽光をより散乱して放射収支に影響を及ぼし、降雨量分布を変化させ、気候変動に関与している可能がある。また、「プラスチックの雨」が水源を汚染し、農業や畜産業を通じて体内摂取されることで健康リスクも懸念される。今後、AMPsの存在量とその環境・健康リスクについての知見をさらに集積することが重要としている。

論文情報:【Environmental Chemistry Letters】Airborne hydrophilic microplastics in cloud water at high altitudes and their role in cloud formation

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