筑波大学の研究グループは、「どちらの選択肢がより価値が高いか」という選択行動に関わる処理が、脳の眼窩前頭皮質で行われていることを明らかにした。

 複数の選択肢の中から1つを選ぶとき、まずそれぞれの選択肢の主観的な価値を見積もり、次にそれらを比較し、最後に比較結果に基づいてより良いものを選んでいる。これまで、価値の見積もりには眼窩前頭皮質が重要な役割を果たすことが明らかにされてきたが、見積もられた価値が脳内のどこで比較されているかは不明だった。

 本研究グループは、価値の比較もまた、眼窩前頭皮質が担っているのではないかとの仮説を立て、これを検証するために、ヒトに近縁なアカゲザルに報酬価値に基づく行動選択課題を行わせ、課題遂行中の眼窩前頭皮質の神経細胞の活動を記録する実験を行った。その結果、眼窩前頭皮質の神経細胞の活動は、提示された選択肢の主観的な価値の差分と相関しており、すなわち眼窩前頭皮質の神経細胞が価値の比較を行っている可能性があることが示唆された。

 続けて、眼窩前頭皮質の活動を薬理学的に不活性化したところ、特に選択肢の価値が近く、どちらを選んだら良いかの選択が難しいときに、価値の低い方を選んでしまうという非合理的な選択の頻度が有意に上昇することが確認された。このことから、眼窩前頭皮質が「どちらの選択肢がより価値が高いか」という価値の比較に関わる処理を担っていることが、神経細胞のレベルで明らかとなった。

 選択行動の脳内における情報処理過程を解明することは、脳部位損傷による行動決定の障害への治療にも大きく貢献できるものと期待される。今後は、眼窩前頭皮質で処理された信号が、どのように最終的な選択となり、実際の行動として出力されるのかを明らかにすることが課題だという。

論文情報:【Communications Biology】Neurons in the monkey orbitofrontal cortex mediate reward value computation and decision-making

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