シマウマのシマシマ、キリンの網目など、動物は体表に多彩な模様パターンをもつ。こうした模様の多様性がどのように生じてきたのか、とくに、迷路模様など複雑でふしぎな模様パターンはどのようにして生まれたのか、その進化的なメカニズムは未だ謎に包まれている。
大阪大学大学院生命機能研究科の宮澤清太招聘研究員は、こうした模様パターンの謎を解くため、まず、魚類18,000種あまりを対象としたこれまでにない大規模な模様解析によって模様モチーフ間の関連性を調べた。その結果、意外にも、シンプルな淡色斑(黒地に白い水玉など)をもつ種と暗色斑(白地に黒い水玉など)をもつ種が近縁に存在する場合に、複雑な「迷路模様」をもつ種が出現しやすいという傾向を発見した。
コンピュータ上の交雑シミュレーションでも、これを説明付ける結果が得られた。淡色斑と暗色斑を掛け合わせて斑点模様を「混ぜる」と、生まれてくる仮想的な交雑個体に迷路模様があらわれるのだ。
ここから、宮澤博士は、淡色斑をもつ種と暗色斑をもつ種の「種間交雑」によって模様が混ざることで迷路模様をもつ動物が生じてきたという仮説を立てた。そして、フグの仲間の魚たちがもつ模様パターンとゲノム情報とを解析してこの仮説を検証した結果、迷路模様をもつ複数の魚が、実際に淡色斑の種と暗色斑の種の交雑由来であることが判明した。
本研究で明らかとなった、シンプルな模様の「混ぜ合わせ」によって複雑な模様パターンが生まれるしくみは、他の主要な魚類でも生じており、模様パターンの多様性の創出に関わっている可能性があるという。本成果は、多彩な動物の模様がどのように進化してきたかという謎を解く上で重要なヒントとなることが期待される。
論文情報:【Science Advances】Pattern blending enriches the diversity of animal colorations