東京都市大学メディア情報学部の岡部大介教授と大谷紀子教授は、シンガーソングライターの白井大輔氏、洗足学園音楽大学の学生の協力を得て、人工知能(AI)が人間の創作活動に加わることで、より円滑な創作活動が実現できることを明らかにした。

 近年、コンピュータの利用教育に関する研究や認知科学における創造的な学習の研究では、社会的視点が重要視されてきた。これは、他者やコンピュータなどの人工物を含めた状況の中で学習を捉えようとするもの。一方、新技術が教育や労働の現場に導入されると、従来の方法・専門性が変化する。特に発展が著しいAI技術の役割は重要になるとされる。今回、「楽曲制作」に焦点をあて、AIが人間の創造的な活動にどのように関与するのかを調べた。

 実験は、既存の楽曲約50曲とAIを使って実施。音大生がある状況を思い浮かべ、それに合う楽曲を2、3選定。それらをAIが混合し、人間による手直しを行った。その結果、人間にとって心地よい楽曲が完成した。さらに、AIの存在は人間の創作意欲を引き上げる効果があり、さらには複数人で行う創作活動の円滑化を図る可能性もあることが明らかになった。ただし、人間とAIとの協調で人の感性に響く曲ができても、人間だけが褒められるため、岡部教授らはこれを「AIの悲哀(悲AI)」と呼んでいる。

 今後、人間どうしの創造的な活動がなくなることはないが、創造的な活動にAIが参加する機会は増えてくると予想される。楽曲制作において、人間同士で作曲した「イマイチ」な作品にとやかく言うのははばかられるが、空気を読まずに振る舞うAIが人と人の間にいてくれることで、円滑な創作活動の実現に役立つことが期待される。

参考:【東京都市大学】人工知能(AI)は将来的にも人間と共存 ~音大生が楽曲を混合して作曲する実験で確認~

大学ジャーナルオンライン編集部

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