信州大学は富山、金沢の両大学とスクラムを組み、地域基幹産業を再定義・創新する人材創出プログラム「ENGINE」を本格的に始動させる。文部科学省の大学による地方創生人材教育プログラム構築事業に採択されたもので、固定観念にとらわれない柔軟な思考力と「ゼロ」から「イチ」を生む実行力を養い、地方創生の推進力となる人材を育成する。
信州大学では、意欲のある学生が、自らの専門領域学部等での学修に加えて、専門分野を超えた知や分析視点を獲得し、学術に対する深い理解と経験を養うため、信州大学独自の履修認定制度として新たに「全学横断特別教育プログラム」を開設(2017年度)。
ローカル・イノベーター、グローバルコア人材、環境マインド実践人材に加え、2021年度よりライフクリエーター、ストラテジーデザイン人材養成コースを新設する。
ストラテジーデザインでは、地域課題の解決に対する情熱と同時に物事を構造的に捉え、データに基づき戦略的なアクションを設計する能力を実践的に育むことを目的としている。
これを推進するのが教育プログラム「ENGINE」であり、5コースが連携して、約2.5年の履修期間に地方創生を牽引できる人材を育成する。教育には大学だけでなく、各地域の自治体や企業、金融機関などの幅広い人材や協働機関が参画する。
ENGINEでは教育プログラムを3つのフェーズで構成する。第1フェーズは、リテラシー強化で、データサイエンスなど地域が求める人材に必要な素養を習得する。戦略的なアクションに必要となるロジックモデルや因果モデル、データの収集に必要となる社会調査や実験計画などの基礎知識、分析や評価に必要な統計分析の基本を学ぶ。
第2フェーズは、キャリア形成として、働くことを知り、地域に貢献し社会とかかわり続ける意義や視点を学ぶ。2018年から学生と企業の対話交流イベント「大しごとーくin信州」を開催し、学生が早い段階から地元企業・社会人と接点を持つ機会を提供してきた。さらに毎月「しごとーく」を実施し、インターンシップや地域・企業課題の解決策を考えるPBLや実践型インターンシップ・プログラムに繋げている。今後は3県で展開し、キャリア意識の醸成と地域への定着を促す狙いがある。
第3フェーズは、これまでの経験を総動員し、実践する段階である。企業が抱える問題を学生と協働で解決プログラムとして設計し、実践する「課題解決型インターンシップ」に取り組み、即戦力となる力を養う。
多くの自治体で人口減少が続き、長野県・富山県・石川県も同様に苦境に立たされている。しかし、2地域居住やワーケーションなど働き方の変革は好機とも言える。新幹線を利用すれば首都圏との通勤が可能であり、今後広域的な地方創生が進めば交流人口・関係人口の質はさらに高まることが期待される。そのためにも、地域の産業の在り方を再定義し、様々な資源や情報(データ)から新しい発想ができる人材の育成が急務になっている。
信州大学の濱田州博学長は「人口減少と新型コロナ後の社会を見据え、新しい価値を創造できる人材をこのプログラムから育てたい」とコメントしている。