日本では高齢化に伴う医療需要によりCTやMRIの設置台数が急増している。人口あたりの保有台数は世界的にも突出している。しかしこれらの高額かつ高エネルギー消費型の画像診断機器は国際的にみても運用効率が低く、医療機関の経営に負担を与えている。また、環境面でも多大な影響を及ぼしている可能性がある。
そこで九州大学大学院経済学府の牛島大悟大学院生(K2-SPRING・2025年度生)、経済学研究院の加河茂美主幹教授、中石知晃講師、広島経済大学の三苫春香助教の研究グループは、全国のCT・MRIの横断的・縦断的な運用効率性を分析。運用効率を改善したときの潜在的な医療コストおよびCO₂排出削減量を推計した。
分析の結果、2020年時点で約85%の都道府県で運用効率性の指標を下回っていた。さらに2014年から2020年の7年間で全国平均の運用効率性が約5%低下しており、全都道府県の約6割で効率性が悪化傾向を示した。各都道府県において平均して約28%の効率性向上の余地があり、これらの非効率的な運用を最適化すると、日本全体で年間約8,000億円コストが削減され、日本の旅客輸送部門の年間排出量に相当する年間約300万トンのCO₂排出削減につながる可能性がある。
医療機関の約7割は、物価上昇などにより経営コストが増えても診療報酬の改定が追随せず、経営赤字に陥っている。研究グループは、病院経営と二酸化炭素排出削減の両面で、既存機器を含む医療資源の適切かつ効率的な活用を提言している。