【3】3つの外的圧力は日本の高等教育機関にどう影響するか
 2100年に向けて大学淘汰を進める外的圧力を1.人口推移と経済の変化、2.科学技術の進化、3.大学の変化と行政施策の3つに分けて整理してきたが、日本の大学淘汰を促進する3つの外圧を図式化したのが、図表3である。

図表3 日本の高等教育機関への外圧の方向性

図表3 日本の高等教育機関への外圧の方向性

 これは、「大学改革の現状とその行方」第4回・前編の図表1(日本の高等教育機関の分布イメージ)で示した日本の高等教育機関のポジショニング・マップを土台とし、図表2で示した3つの外圧の方向性を重ね合せて図式化したものである。

 第一の外圧(黄色)である「人口推移と経済の変化」は、日本経済の衰退を促進し、高等教育の学費を低減する圧力になると思われる。従って図表3の左方向に向けたニーズが拡大していく。公的資金を大学あるいは進学希望者に奨学金として、どの程度投下するかで生き残れる大学数は左右されるだろう。また、国内18歳人口の激減は、下から上の方向に向かって高等教育機関の淘汰の外圧となっていく。投資対アウトカムが低い(高い学費でアウトカムが低い)私立大学から淘汰は加速するだろう。

 次に、第二の外圧(ピンク色)である「科学技術の進化」は、無料のオンライン学習からミネルバ大学に代表される投資対アウトカムが高い(アウトカムは高いが低学費)大学のニーズである。左上から右下に向けたニーズが拡大していくだろう。同時通訳機による「言語の壁」が取っ払われた瞬間から、このニーズが最も大きくなると思われ、高投資対アウトカム(高アウトカム/低学費)大学が拡大するとともに、オンラインが主流であるがゆえに寡占化が進んでいく。

 国内で、このマーケットは、大学の通信制や一部のオンライン型の大学が存在する。しかし、今後、海外の財政豊かで先端技術を駆使するオンライン型大学との競争が激化していく。

 また、人工知能の進化は、職業の在り方と教育の在り方を変えていく。国立大学に代表される知識偏重型で入試選抜し知識教育中心の大学は、人工知能による教育に取って変わられ、その大学を出た人材は、人工知能を携えたロボットに代替されていくだろう。

 最後に、第三の外圧(緑色)である「大学の変化と行政施策」は、高額ではあるが世界で活躍できるアウトカムを最大化した世界トップクラスの大学(高アウトカム/高学費)の圧力である。アジア・アフリカの各国の発展とともに財政豊かな世界一流大学が世界中に乱立すると予測される。経済力があり意欲高い高校生は、国内の大学ではなく海外の一流大学へと留学する傾向は、相対的に高くなってく。また、高額だがアウトカムの高いオンライン型(科学技術の進化とともにバーチャルリアリティの中で受講可能となる)の世界一流大学への寡占化も促進されることで、国内の意欲高い学生は海外の大学へ流出していくだろう。国内の国公立大学の存在価値が問われることとなる。

 「大学改革の現状とその行方」第4回では、2100年の未来予測から見える大学淘汰を加速する外圧を3つに整理して大学改革の課題を検討してきた。

 それでは、これからの時代を読み解き、チャンスととらえ、日本の高等教育機関の改革はどのような方向に向かえばよいのだろうか?

 次回の「大学改革の現状とその行方」第5回では、筆者がこれまで大学改革をサポートしてきた持論を基に、日本の大学の改革の方向性を考えていきたい。

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寺裏 誠司

・株式会社学び 代表取締役社長
・一般社団法人アクティブ・ラーニング協会 理事
・リクルート進学総研 客員研究員
これまで、コンサルティング支援した大学・短大・専門学校は250校以上、支援高校2,500校の実績。講演・セミナー・研修・大学非常勤講師など200件、対象3万人以上の実績を有する。
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