東京医科歯科大学の研究グループは、世界で初めて、ラットの眼球周囲にヒトの線維芽細胞を移植することにより近視進行抑制効果を確認した。線維芽細胞は自身の皮膚から採取可能で、培養も容易である。世界中から渇望されてきた近視抑制治療が、自己移植で可能になるかもしれない。

 近視は世界で最も多い視覚障害であるが、安全で確かな効果のある近視進行抑制治療は未だ確立していない。今回、研究チームは、近視が進行すると眼球の強膜が薄くなること、強膜の主成分であるコラーゲンとそれを生成する線維芽細胞がともに減少することに着目した。線維芽細胞を移植しコラーゲンを供給することで、強膜が補強され、近視の進行を抑えられると考えた。

 実験では、閉瞼処置により近視を誘導したラット眼の眼球周囲に線維芽細胞を移植。処置後の眼球の様子を観察した。結果として近視の指標となる数値が非移植群に比べ40%抑制されていた。また、眼球の強膜が新しいコラーゲンの層で補強されていることがわかった。

 これらの結果から、線維芽細胞の移植による眼球強化で近視進行を抑制できる可能性が示された。ヒトへの応用においても、線維芽細胞は自己移植が十分可能なことから、移植手術による拒絶反応の恐れがない。画期的なヒトの近視抑制治療の開発へ大きな一歩を踏み出したと言える。

論文情報:【Journal of Tissue Engineering and Regenerative Medicine】

大学ジャーナルオンライン編集部

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