富山大学大学院医学薬学研究部の研究グループが、マウスを用いた実験で薬物依存を抑える新しい物質を発見した。研究成果は英学術誌「Scientific Report」に掲載されたが、世界中で大きな社会問題になっている薬物依存の治療につながる可能性に期待が集まりそうだ。
研究は中国出身で薬物治療学研究室の傅柯荃さん(博士課程後期3年)が中心になり、新田淳美教授、宮本嘉明准教授と5年かけて取り組んできた。
それによると、マウスに覚せい剤を反復投与したところ、脳内で著しく発現量が増加する分子としてTEME168が見つかった。薬物依存は脳の神経伝達物質ドーパミンの増加で引き起こされるが、TEME168は別の分子オステオポンチンと結び付くことでドーパミン量を抑え、脳の側坐核という部分で発現量を増加させると覚せい剤依存症を抑えていた。オステオポンチンをマウスの脳に注入しても、依存症を抑制する結果が出た。
覚せい剤など薬物依存は再犯率が国内で60%と高く、大きな社会問題になっているが、十分な対策が講じられていない。薬物依存を精神疾患の1つととらえ、治療して社会復帰させることが模索されているものの、異存形成のメカニズムが分からず、治療薬もなかった。研究グループは今回の発見が薬物依存治療薬の開発につながるとみている。