東京工業大学の研究グループは、工業的に有用な「芳香族アミン」を副産物なく製造することができる新触媒を開発した。この新触媒を使うと、芳香族アミンの製造で生じるエネルギーを3分の1まで低減できる。
芳香族アミンは、医薬品、ゴム、ポリマー、接着剤、染料など様々な化成品の原料として用いられている。しかし、既存の触媒を使った製造法では、副産物が多く生成されてしまうため、不純物を取り除くために多大なエネルギーが必要となり、コストを押し上げていた。
研究グループが開発したのは、「面心立法ルテニウムナノ粒子触媒」(FCC-Ru)という新触媒。従来の触媒とは大きく異なった構造を持ち、副反応を完全に防いで有用な芳香族アミンだけを合成でき、加えて、反応効率を3倍以上に高められるという。例えば、芳香族化合物であるフルフラールからフルフリルアミンを合成する場合、従来の触媒では、原料の10%以上が使い道の無い副産物になっていたが、FCC-Ruでは、フルフリルアミンの収量が99%に達する。様々な芳香族アルデヒドを原料とした有用芳香族アミンの合成でも同様の効果が得られたといい、これはFCC-Ruによって芳香族アミンの生産を限界まで高効率化できることを意味している。
また、FCC-Ruは製品と副産物の分離が容易な固体材料で、繰り返しかつ連続的に使用しても触媒の性能が低下しない。医農薬品として大量生産される芳香族アミンの製造に革新をもたらすことが期待されている。
さらに、今回の触媒性能を可能とした研究グループの新しい考え方や設計方針は、芳香族アミンにとどまらない様々な化成品生産を革新するポテンシャルを持つとも考えられている。