大阪市立大学大学院の松尾貴司大学院生と石井聡講師らの研究グループは、意欲を引き出すような情報が与えられることによって認知課題の成績が向上する神経メカニズムを解明した。

 これまで、学業成績の向上には達成感などによって引き出される学習意欲の重要性が指摘されていたが、そのメカニズムは不明で脳科学的な裏付けは十分ではなかった。そこで今回、研究グループは認知機能と学業成績の密接な関連性を考慮し、意欲を引き出すような情報の提供によって認知機能が向上する神経メカニズムを研究した。

 実験には健常成人男性20人が参加。2つの条件下で同一の注意機能と作業記憶に関わる認知課題を行った。一方の条件では認知課題の合間に実際の成績とは無関係に、認知課題の成績が平均を上回りほぼ最高レベルであることを示す画像を提示。もう一方の条件では比較のため、課題成績とは無関係の画像を提示した。

 その結果、課題成績とは無関係の画像を提示した場合には次第に認知課題の成績(正答率)が低下したが、成績が良好であったことを提示した場合には課題成績が保たれた。認知課題中の脳活動を特殊なセンサーで調べると、成績が良好であったことを提示することで課題成績が保たれた程度(=そうでない条件に比して成績が向上した程度)と情報処理の活発さとの間に関連がある脳部位の存在が明らかになった。達成感・有能感を引き出すような情報によってこの脳部位の働きが促進され課題成績が向上したものという。

 今後は、多様なシチュエーションにおける意欲と課題成績に関わる神経メカニズムを明らかにし、より良い教育法(成績のフィードバック方法など)の実践に貢献できるとしている。

論文情報:【PLOS ONE】Neural correlates of the improvement of cognitive performance resulting from enhancedsense of competence: a magnetoencephalography study

大学ジャーナルオンライン編集部

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