東京農工大学、国立環境研究所、森林研究・整備機構森林総合研究所の共同研究チームは、高山帯・亜高山帯への訪問者の調査から、外来植物の持ち込み抑止の障壁は、訪問者に外来植物の知識・問題意識があっても対策行動(靴の清掃)につながっていないことにあることを明らかにした。
外来植物は生態系・経済活動・人の健康に深刻な問題を生じ、国立公園などでは外来植物の持ち込み対策が必要となる。しかし、意図せず持ち込むタネの量や、訪問者の外来植物に関する知識や問題意識の程度、タネの持ち込み対策のための靴の清掃をした訪問者の割合などについての定量的な知見はほとんどなかった。
今回、中部山岳国立公園・立山駅構内で訪問者を調査し、靴に付着する土を採集した。また、各個人の外来生物の問題に対する知識・問題意識の程度や知識を形成した情報源をアンケート調査した。採取した土サンプルからタネを発芽させ、生きたタネの量を見積もった。
この結果、訪問者(344人)の7.8%(27人)の土サンプルに発芽可能な外来植物のタネを確認。また、ほとんどの回答者に外来生物の持ち込みや影響に関する知識があったが、環境を守る目的で訪問前に靴を清掃したと回答したのは3.8%だった。多くの回答者はテレビで外来生物の知識を得ていた。さらに、登山靴・トレッキングシューズ(複雑な形状の底面の靴)の土サンプルでは、それ以外の靴(スニーカー等)の土サンプルよりも発芽数が2倍以上多かった。
立山だけでも年間約93万人(2017年)が訪問する。問題意識と実際の行動のギャップを踏まえた効果的な抑止策の検討・実施により、(亜)高山域への外来植物の持ち込み抑止の進展が期待されるとしている。