東京大学社会科学研究所の石田浩教授らの研究グループは、若年・壮年者の就業、結婚、意識などの変化を探るため、2007年から毎年「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」を実施している。今回、その2016年の調査結果を公表した。
この調査は、調査対象者を長期間固定して継続的に調査を行う「パネル調査」で、同一の人々に繰り返し尋ね続けることで、変化を適切に捉えることができ、他の調査では明らかにすることができない信頼性の高い調査結果を得ることができる。
今回扱ったテーマは、「離家経験」、「長時間労働と家族形成」、「子ども保険への加入」、「人々の考える危機」の4つ。調査によると、親から独立して生活を営む「離家経験」は、29~49歳の人のうち8割以上が経験があり、社会経済的に恵まれた家庭の出身者は離家時期が遅い傾向が見られた。
「長時間労働と家族形成」については、調査をはじめた2007年と現在を比較すると、男性の典型雇用者の週の労働時間は50.2時間(2007年)から46.5時間(2016年) と、3.7 時間ほど短くなっているのに対し、女性は、37.5時間(2007年)から37.4 時間(2016年)でほとんど変わらなかった。労働時間と家族形成の関連を見ると、男性は週70時間を超える過度の長時間労働の場合に、女性は40時間を基準とし相対的に労働時間が長くなるほど、結婚や出産を経験する割合が低下していた。
「子ども保険への加入」については、子どもを持つ人のうち、57.9%が子ども保険へ加入。もっとも加入率が高かったのは世帯収入650万円~850万円未満で、61.8%。裕福な世帯ほど加入率は高く、また、子どもが女子のみの世帯では加入率がやや低い傾向が見られた。「人々の考える“危機”」については、年齢性別を問わず、地震などの自然災害・天災を「危機」と考える傾向が高く、国際関係や介護・老後問題を「危機」と捉える人は、年齢が上がるにつれて多くなる傾向が見られた。