地方自治体の予算編成で減価償却情報(※1)が決定に影響し、非財務情報(※2)や発生主義(※3)コストが影響する可能性があることを、横浜市立大学国際商学部の黒木淳准教授らの研究グループが見つけた。研究グループは新型コロナウイルス対策で自治体財政のひっ迫が予想される中、これらの情報を予算編成に活用すべきとみている。
横浜市立大学によると、研究グループは全国自治体の予算編成担当者に対し、2つのストーリーを設けて質問を送り、回答を分析した。
質問の1つは学校の建て替えに関するもので、減価償却情報がある例とない例をランダムに送り、建て替えをするかどうか尋ねた。その結果、減価償却情報がある場合はない場合に比べ、建て替え予算の決定に消極的になることが分かった。
2つ目は予算額の査定に関する質問。何も情報がないケース、非財務情報があるケース、発生主義コストと非財務情報があるケースを設定したところ、非財務情報があるケースは予算額に影響があり、発生主義コストと非財務情報があるケースは財政がひっ迫している状態の自治体が予算額に影響があることが明らかになった。
研究グループは新型コロナ対策や人口減少などで自治体の予算ひっ迫が今後、さらに進むと予想されるだけに、これらの情報を予算編成に活用するよう呼び掛けている。
※1 減価償却情報 耐用年数や減価償却累計額など
※2 非財務情報 損益計算書や貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書など財務諸表以外の情報
※3 発生主義 金銭のやり取りの有無に関係なく、取引が発生した時点で費用と収益を計上する会計手法。費用だけでなく、収益を多く認識する可能性がある
参考:【横浜市立大学】地方公共団体の予算編成における 非財務指標・発生主義会計情報の有用性とその条件を発見 ~質問紙実験アプローチによる解明~