化石燃料の代替エネルギーとして注目されている地熱利用。その促進に大きな役割を果たすセンサーを、富山大学大学院理工学研究部の岡崎琢也博士研究員、倉光英樹教授らの研究グループが開発した。
日本は地熱資源量が世界3位の地熱大国。再生可能エネルギーとしても注目されている地熱だが、その利用推進にとって大きな障害となっているのがスケール(水垢)だ。これは炭酸カルシウムや非晶質シリカなどの無機塩による付着物で、熱交換効率や流量の低下を引き起こす。
そこで研究グループは、地熱水から生成するスケールをリアルタイムで評価できる新たなセンサーを開発した。センサーとして用いるのは、光ファイバーのコアと呼ばれる光導波路を露出させたもの。コアを形成する材料よりも屈折率の大きなスケールがセンシング部位に付着することで、光ファイバー中での全反射が阻害され、伝播する光の強度が低下する。こうして起こる光の減衰により、地熱水からのスケール生成を遠隔でリアルタイムに評価できるというものだ。
このセンサーの特長は、構成が単純で、耐熱性に優れ、低コストであるという点。これまで目視や重量・流量からの計測に頼っていたスケールの評価を、迅速に行うことが可能になった。
また、市販の一般的なスケール抑制剤を地熱水に添加した測定では、わずかな添加濃度の差がスケール生成に大きな影響を与えることも判明。スケール抑制のための研究を加速度的に飛躍させられる可能性も見えてきた。
地熱開発において大きな妨げとなっているスケール問題の解決へ向け、重大な足掛かりとなることが期待されるとしている。