Ageing: Mental speed stays high until age 60

 
心的処理の速度(メンタルスピード)は60歳まで減速し始めないことが、100万人以上の参加者の解析から明らかとなった。この知見を報告する論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。今回の結果は、メンタルスピードのピークは20歳であるというこれまでの仮説に異議を唱えるものである。

年を重ねるにつれて、環境中の変化(刺激)に反応する時間は長くなるのが一般的である。こうした反応時間は20歳頃から遅くなっていき、年齢が上がるにつれて徐々に長くなっていく。

今回、Mischa von Krauseたちは、認知課題に対する反応時間を測定するオンライン実験に参加した100万人以上から得られたデータを解析した。参加者は、画面上に一瞬表示される単語や画像の選択を、それに反応して正しいキーを押すことで分類するように求められた。その結果、反応時間は20歳以降に遅くはなり始めはしたが、それは判断に対する慎重さの高まりや、キーを押すまでの時間といった判断に関与しない過程の遅れに起因する可能性があることが判明した。一方で、正解に対する何らかの判断を行う心的過程は、60歳まで減速し始めることはなく、60歳以降に徐々に遅くなっていった。

von Krauseたちは、メンタルスピードは年を重ねるにつれて遅くなっていくと広く信じられているが、今回の結果は、人生の大部分において、また一般に職業生活を送る期間において、その仮説が当てはまらない可能性があることを示していると結論付けている。

doi:10.1038/s41562-021-01282-7
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「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

 
※この記事は「Nature Japan 注目のハイライト」から転載しています。
転載元:「老化:メンタルスピードは60歳まで減速しない
 

Nature Japan

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