筑波大学医学医療系吉本尚講師らの研究グループは、3大学の学生2177人を対象とした調査により、アルコール過剰摂取は、急性中毒には至らなくても外傷を負う危険が高いことがわかった。
大学生を含めた10~20代の若年者におけるアルコール過剰摂取を原因とする死亡は世界で年間32万人に達し、その死亡原因の多くを外傷が占めている。しかし、アルコール中毒以外の健康障害についての調査はほとんど行われていない。
そこで、研究グループは日本の大学生2177人を対象として、アルコールの過剰摂取とアルコール関連外傷(酔いによる事故や怪我)との関連性を調べた。短時間での多量飲酒はビンジ飲酒(Binge drinking)と呼ばれ、今回の研究では、男性2時間で純アルコール50g 以上、女性2 時間で純アルコール40g以上摂取した場合とした(ビール(5%)500mlはアルコール20g)。
その結果、ビンジ飲酒を過去1年間に1回以上経験したのは男性693人(56.8%)、女性458人(47.8%)、アルコール関連外傷を過去1年間に経験したのは107人(4.9%)で、そのうち104人(97.2%)がビンジ飲酒を過去1年間に1回以上経験していた。
統計解析により、年1回以上ビンジ飲酒を行っていた学生は、そうではない学生と比べて過去1年間のアルコール関連外傷の経験が25.6倍であることがわかった。海外の先行研究の結果(月1回以上一時的多量飲酒で3.9~8.9倍増加)と比較しても、頻度は少ない(年1回以上)が、きわめて高い値だ。日本人の体格や体形、アルコール代謝などが影響したとされる。
大学ではアルコール摂取に関する指導が新入生オリエンテーションなどで行われているが、未成年飲酒や急性アルコール中毒だけでなく、ビンジ飲酒の教育も行う必要があるとしている。